2011年10月22日 (土)

秩父山塊を彷徨う教示本がまた一つ

HP「酒楽会」の長沢和俊氏からご本をお送りいただいた。
山から降ってくる雪』で氏の足跡を記された二百ページにならんとする冊子である。

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中の「奥秩父、忘れられた山径を辿って」の諸項は、私の秩父山塊への想いの憧憬となる一冊に加わろう。
ハラハラと捲れば一つに、川浦谷林道の断崖に架けられた百間橋を氏が渡っている写真がある。実はヘッピリ腰で私も渡ったことがあり、(既に百間橋は朽ち落ちたが)この川浦谷林道への想いもつのる。
齢を重ねて己が足弱に舌打ちをするこのごろ、秩父の山塊への夢を誘うに且つすべしと。
長沢氏に篤く感謝したい。

余談だが
長沢氏は此の夏に、柳小屋~荒川小屋跡~小荒川谷~孫四郎峠~雁坂峠~釣橋小屋跡と独行で歩かれた。同年代であろう氏の脚力・精神力に瞠目もし、また径すがらは如何ばかりであったろうか…と小さく嫉妬もした。
先に知っておれば『小荒川谷は古に金を掘った谿とか・・・できれば小金の一粒でも拾うて・・・』とねだりたかった。
(何の了解もとり得ずに此処に書き載せてしまった事、長沢様にお詫びいたします)

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2010年12月12日 (日)

小倉沢の秩父鉱山へ

『ここがここだいな。まず、この中津川沿いの道を一里ほど行くってえとな、右側に切り立った岩山を刳り貫いた短けえトンネルがある。それを潜って支流の小倉沢へ入る。その道を行きゃあ鉱山だ』
中双里の旅籠の女将は長治を捜しに行く松子に地図を指し示して説明した。
笠原将弘著の秩父の職漁師の生涯を描いた小説「岸谷鱗平商店」の一節である。

本を読み返していて、無性に小倉沢の秩父鉱山に行ってみたくなった。
“八丁沢で炭を焼く長治を慕って歩いた松子を辿ってみようか・・・”

赤岩橋の先の広場に一台の白い車が停まっている。
端で独りの青年が支度をしていた、重装備だ。
『何処へ行くんですか』訊ねると
『対岸のあの沢を登って、両神山に上がります』と指差して云う。
世の中、とてつもない冒険者が居るものだ。
『それでは、お気をつけて・・・』
精悍な好青年だった。

松子が長治と再会を果たした八丁沢まで行き、戻ってきた。
白い車はまだ停まっていた。
“今頃は、ハーケンを打ちザイルを出しながら登っているのだろうか”
対岸の小谿は、それ程に急角度で急峻に突き上がっている。


林道の奥は道が凍って恐い。
小橋の上はスケートリンクのようだった。

“奥秩父行は、春までお預けだな…”

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2010年11月20日 (土)

晩秋の浦山の冠岩

小春日和とか・・・、だが晩秋の陽は弱々しく寒い。
浦山の冠岩を訪れた。

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冠岩の付名は、
冠岩沢の中流左岸に屹立する岩壁。

頂上には、太い松の木が立っている。
見上げ眺めているばかりでなく
何時の日かに、尾根を回り込んで登り
あの松の根方で番茶で寿司を喰ってみたいものだ。
とても暖かくて、とても良い場所に思える。

そして、七ッ滝の悪場を杣道で巻いて、25㍍大滝を拝んだ。

降って冠岩廃集落を巡った。
屋根の無くなってしまった板碑を見、
家屋跡を一軒一軒回ってみた。
上林さん(オッちゃん)の別宅は健在だ。

一番の上に在る神社を詣でた。
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なんと・・・
祀られてある祠が全て倒れてしまっている。
小さなお地蔵様は散々に転び散らばっている。

何とか起そうとしたが、なんと重い。
非力な腕力で奮闘するとヒョロけて
反対側に倒してしまった、少し壊してもしまった。
これでは、ヒョットして祟りがあるのではあるまいか。

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いよいよ奮闘して、何とか起し立てた。
転がっているお地蔵様を立て並べた。

今度に来る時には、釘と金槌を持って来よう。

でも・・・ 秋ももう終わりで寒い冬が来る。
今年は、もう来れないかもしれない。


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2010年11月 2日 (火)

秋の大洞林道2010

 十一月に入ると、毎年に大洞林道を歩く。
山谷が錦織の秋になると必ず出かけるのです。
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或る年は、惣小屋沢の二葉瀑を観に歩き
或る年は、松葉沢に産卵場を造りに歩き
或る年は、バラクチ山ノ神を訪ねるに歩き
或る年は、大洞山ノ神を詣でるに歩き
今年は、何もせずゆっくりと終点までを歩きました。

不思議ですね 年の終りが近づく秋には
“行かねばならない、歩かねばならない処・・・”
そんな感情に囚われるのです。
                                      望む大洞谷と惣小屋沢の出合い                                
                                   誰も居ません  誰にも遇いません
                                     だからこそ 森羅万象
                                   独り占めが できるような気が致します。
                    『おぉ~い…』 叫んでも 聞こえてくるのは 風の音と渓声だけです。


 

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2009年10月28日 (水)

大洞山ノ神に詣でる

“今年も沢山よい思いをさせていただきました、おかげさまで事故もなく過すことができました。
寒い冬が来るので、もうすぐ奥秩父巡りも終ります。 ご加護、ありがとうございました。”

鉄火巻きと御縁(五円)玉を供えて、深く御礼を申し上げた。

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『そうですか、よくぞ参られました。 また来年、訪れ来るのを楽しみにしておりましょう。』

涼やかな女人の声がした…と思ったのは錯覚か…、風の音であろうな。

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落ち葉を敷きつめた雲取林道を車を走らせて荒沢橋の広場に着く

訪れる人は誰も居ない。
シーズンには山菜採り・釣り人・山登り・沢屋さん等で賑わう。
うら寂しくもあるが、これも又よい。
荒沢谷の奥域の山々が妙に明るい。

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大洞橋を渡って崩落の続く大洞林道を行く

バラクチ尾根の山陰で陽の当たらぬ道の谿風は肌寒い。
見上げる東仙波の高稜はいかにも暖かそうに見える。


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もう直ぐに仁田小屋沢を渡る

振り返る辿り来た林道もようやく陽が射しはじめた。

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小手を翳せば

大洞谷、惣小屋谷と分ける、これから向かう古の大洞林道本線が踏む仙波尾根の突端。
遥か先に牛王院平、ゴテン岩の頭、唐松尾山へと続く甲州との国界の主脈稜線が望める。


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松葉沢の手前から沢に絡んで
大洞川に降り立つ

大洞川の最終堰堤越しに望めば、
林道の伸延で崩落甚だしくガレ沢と化した惣小屋谷が哀れだ。

温かい珈琲が恋しい、小休止するとしよう。


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増水気味の大洞川を渡って惣小屋跡から仙波尾根の末端を上がる。
岩稜を惣小屋谷側に巻いた滑落しそうな心細い道を行く。
岩稜を回り込むとロープに縋って一気に登る。

突頂の痩せた岩尾根の覗き岩のコル(ソゲ岩とも)に登り立つ。

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右下から惣小屋谷の渓声
遥か左下から大洞谷の慟哭が轟々と轟き聞こえて凄まじい。
此処からの眺めは素晴らしく
『凄いね、凄いところだね…』と共に語った釣友はもう亡く秋風が吹き抜ける。

巾一㍍ほど、岩尾根を渡り歩くに神経を使う。
覗き岩のコルを乱れた踏み跡で惣小屋谷側に巻いて降りる。
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降りると、ただっ広い鞍部、
薄い林道本線の踏み跡は左にあるが、一番の凹部を歩くのが心地よい。
緩い傾斜を南へ歩く、行く手に「鹿の楽園」と彫られた木製のプレートの付いた細木がある。
そう、此処は鹿の楽園で何時もピーピーと鳴き声がする。
(プレートが落下していたので括り付けた)
此処が何時までも植林帯にならぬことを願う。
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鞍部が狭まり右に曲ろうとする処が林道本線から井戸沢への分岐。
再び南正面の岩尾根に取り付く。

上ると「大洞山ノ神」の祠が迎えてくれる。

敬って参拝した。
見ると、沢山の淨銭が供えられてある。
訪れ通る逍遥の徒の多いことが知れる。


昔に『大洞山ノ神を知らずに大洞を語るな…』と叱られた、其の通りかもしれない。

それにしても、沢山の供銭、
往来する人も絶えて、なんにも供えられて無かったバラクチ山ノ神を想い煩う。

“いけない いけない…”
山ノ神は女人神、それも醜女で男(おのこ)の訪れるを喜ぶという、いくらブ男の私でも一女人神の前で他所の女人神を想うては妬心から災難を受ける恐れもある。
谿友は『日に複数の山ノ神を訪れると、よくない事が起る。』と云っていた。

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真下は川胡桃沢の出合いから舞滝の間、
谿が大きく屈曲した辺りであろう。

遥か下に小瀑から駆け下る飛沫が見える。


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奥谿筋に目をやれば、
竜バミの頭(竜喰山)から派生した天目尾根が長く伸び来て大洞谷を井戸沢と椹沢とに二分している。
上に三ッ山から高度を下げて北天のタルの鞍部、そして大洞山から竜バミの頭が雄大に望め深く喰い込む谿々は陰鬱さを偲ばせる。


降りて椹沢との二俣まで行こうか…秋の陽は短くてその余裕はない。
続く岩尾根を一説に「此処がソゲ岩」とも云われる岩峰上に向うことにした。
山ノ神を抜けて井戸沢への降り口を見送り恐竜の背の様な岩尾根を行く。

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栂の大木二本の間を過ぎると、いよいよ尾根は細い。
部分は巾五十㌢ほど、突き出た岩を抱えて蟹の如くに横ざまに進むのだが、皆がそうするらしくそのような痕跡が残っているのに笑いが出る、とは云え落ちようなら一気に五十㍍は転落するので必死。

此の辺りはキンチヂミの滝上であろう。
栂ノ沢の出合い、上に椹沢との二俣が眼下。
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一説のソゲ岩かと思われる突頂。

急斜面を這い登ると岩尾根の頂。
痩せた岩尾根に巨木が根を張って立っているのに驚嘆する。
“此処が一説のソゲ岩なのであろうか”
此の上も尾根は高度を上げて続いているのだが、裸岩面は減り井戸沢からの立木急斜面となってゆく、
そしては岩尾根の右腹面を辿り来た林道本線と合流する。


“さて、ソゲ岩とはいったい何処が本当なんだろう…”って疑問も湧き増して、
大洞山ノ神の前でバラクチ山ノ神を想った祟りもなく荒沢橋の広場に戻り着いた。

まだ午後の三時というに、深山の谷間は秋の陽は陰って仄暗くあった。


尚)道程・所要時間などについては、幣HPのコンテンツ【てんから庵】の「辿る杣道」をご覧下さい。

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