赤岩魚をさがして・・・。【其の八 林道終点の上流へ】
此処は、奥武蔵の名栗川水系の大支流のA川のT入。
前に此処を辿ったのは九年ほどの前の初夏であった。
T入はA川に流れ入る枝沢で水量は少なく営林用の林道が上流にまで沿って続いている。
出合いからは滝を連ねた悪場でA川からの渓魚の遡上は止められている。
此処の沢名は、此の極下流域に滝が在ることから付けられた名と思われる。
以前に辿った時は、下流の悪場を敬遠して直ぐ覆い被さる酷いボサに悩まされながらも小型の岩魚が棲むのを確認しながら三時間余りを営林用林道の終点下までを遡ったのだった。
今回は、営林用林道からの上流域を目指して、確認に出かけた。
以前は、林道の入り口に「進入禁止」のゲートが在ったのだが、今は取り払われている。
覆木の繁った沢筋を眺めながら1kmも行く、営林用林道の終点に着く。
4.5mの渓流竿に1mの提灯仕掛け、小振りの毛バリを結ぶ。
沢に降りると幾分と開けているものの、水量は少なく流れは一跨ぎも無い。
低い階段状の小さな落ち込みに丹念に毛バリを落すのだが、まったく魚信も魚影も無い。
全く音沙汰は無いのだが、もしやもしやの念に囚われ一時間半ほども遡った。
やがて、大岩の転がる場に着く。
此の上で、遂に巾一尺にも満たない流れになってしまった。
いくら両生類か?と思えるほどの岩魚であっても、棲むには無理だ。
“やはり、棲んではいなかったか・・・。”
岸に上がると、其処は広い蕨の群生地であった。
“やはり、林道終点下の小滝が此の沢の魚止メか・・・。 来年は、蕨を獲りに来よう。”
思うのであった。
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