2016年7月19日 (火)

朱斑の岩魚をさがして・・・。【其の八 林道終点の上流へ】

 此処は、奥武蔵の名栗川水系の大支流のA川のT入。
前に此処を辿ったのは九年ほどの前の初夏であった。
T入はA川に流れ入る枝沢で水量は少なく営林用の林道が上流にまで沿って続いている。
出合いからは滝を連ねた悪場でA川からの渓魚の遡上は止められている。
此処の沢名は、此の極下流域に滝が在ることから付けられた名と思われる。

 以前に辿った時は、下流の悪場を敬遠して直ぐ覆い被さる酷いボサに悩まされながらも小型の岩魚が棲むのを確認しながら三時間余りを営林用林道の終点下までを遡ったのだった。
今回は、営林用林道からの上流域を目指して、確認に出かけた。

以前は、林道の入り口に「進入禁止」のゲートが在ったのだが、今は取り払われている。
覆木の繁った沢筋を眺めながら1kmも行く、営林用林道の終点に着く。B287

4.5mの渓流竿に1mの提灯仕掛け、小振りの毛バリを結ぶ。
沢に降りると幾分と開けているものの、水量は少なく流れは一跨ぎも無い。
B287_2低い階段状の小さな落ち込みに丹念に毛バリを落すのだが、まったく魚信も魚影も無い。

全く音沙汰は無いのだが、もしやもしやの念に囚われ一時間半ほども遡った。
やがて、大岩の転がる場に着く。
B287_3此の上で、遂に巾一尺にも満たない流れになってしまった。
いくら両生類か?と思えるほどの岩魚であっても、棲むには無理だ。
“やはり、棲んではいなかったか・・・。”

岸に上がると、其処は広い蕨の群生地であった。
B287_4
“やはり、林道終点下の小滝が此の沢の魚止メか・・・。 来年は、蕨を獲りに来よう。”
思うのであった。

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2016年5月25日 (水)

朱斑の岩魚をさがして・・・。【其の七 最終堰堤の上流へ】

 奥山にも、藤の花が咲いた。

“出かけたい・・・” と思うのだが “此処を辿ろう・・・” との気を湧かせる沢谷が思い浮かばない。
過去の「釣り行記録」を繰ると、魚止メを確認できていない沢が幾つかあった。

其の中の、奥武蔵の「K入り」を遡ることにした。
記録では、平成21年に辿った時は、堰堤が次々に続いて辟易し最終堰堤と思われる処から戻ってきてしまい、其の上流は “また次回に・・・” としていた沢で、其の侭に行かず終いになっていたのだった。

 天気は上々。
沢筋に沿う林業用林道の終点に着いた。
左岸は、杉・檜の植林地。

Bh285nk1
先ずは、前回(7年前)に最終堰堤と判断した下に降りて探ってみることにした。
毛バリを振ると1投で5寸の岩魚が咥えた。

Bh285nk3

幼魚の為に、朱斑の出がまだ薄い。 
“ヨシ ヨシ、この上からが本番ヨ”と折角に降りた急斜のザレを難儀して喘登した。
堰堤上は、砂礫が堆積している。少し先が斜度のある段々滑メが30㍍ほど。

Bh285nk2_2
もう歳だ、“転び落ちてもいけないし、無駄な労力は使うまい・・・”
左岸の踏み跡(仕事道)へ上がって巻いた。
滑メの上は、水は少ないものの落差のある落ち込みが続く良い渓相だ。
ソット落ち込みを覗けば、なんと良型の岩魚が慌てて岩の下に隠れた。
やはり岩魚は棲んでいたのだ。
頭上に木々が繁るので、提灯仕掛けに換えた。
ソット大石に隠れて、落ち込みに毛バリを落すと、グイと引き込んで8寸の色合いの良い岩魚。
水槽に入れて前から横から写真撮影。

Bh285nk4
Bh285nk5

フット見上げる先に、なんと堰堤があるではないか。
左岸の踏み跡で堰堤の上に出た。
上がった処に、鉄塔巡視路の標識があった。

Bh285nk6
「通勤路 滑落注意」と書いてある。
「通勤路」と書かれているのがユーモラス。
時に奥山谷でザックを背負った巡視員の方に行き逢うことがあるが、仕事とはいえ頭が下がる。
『お疲れさま…』と云うと『釣りですか…』と大概が云う。
今からでは駄目だが、今度に生まれ替ったら、こういう仕事が適性かもしれない。
其の時は、何時もザックにテンカラ竿を忍ばせておこう。
なんと、その先にも堰堤が見えるではないか。近寄れば「平成元年 治山事業」とある。

Bh285nk7
“こんな奥まで堰堤か・・・”嘆息もする。

“せめて、此の堰堤が最終であって欲しい・・・”
堰堤を登った上は“水が無い!!”
それでも、50㍍ほど遡ると、何やら水音がしてきた。
辿れば、水流は復活してきたが、いかにも細い。

 それからも、少ない水量の落ち込みに丹念に毛バリを落したが、何の音沙汰もない。
両岸が岩場の中に小滝の処、ここも蜘蛛の巣に絡まるばかりで、何の反応もなかった。

Bh285nk8
そして遂に、遂に水は涸れてしまった。

Bh285nk9

今回に確認された最終堰堤から約一時間半、毛バリを振り振り遡ったけれど、
残念ながら堰堤上に岩魚は棲んでいなかった。
目的は達成したのだが、人工構築物の堰堤が「魚止メ」とは、寂しいかぎりであった。
 何時か、“堰堤間の岩魚を上げてやりたい・・・”とも思うのだが、
あの細流では、辛い思いをさせてしまうだけなのかもしれない。


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2015年6月29日 (月)

後期用に毛鈎を巻く

 梅雨が明けると今期も後半になるので、毛鈎を巻いた。

Bh276定番のハリ、返しをヤスリで削りとる。少しだけ凸を残して置くとスカバレは減る。
但し、魚を傷つけてしまうので返った部分は完全に取り除く。

Bh2761盛期定番の毛鈎を二本巻いた。

二本あれば、十回遡行に充分。 これで準備は万端、終了した。

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2015年6月27日 (土)

朱斑の岩魚をさがして・・・【其の六 熊の掻き跡に恐れながら】

 梅雨の合間を狙って、赤岩魚の奥武蔵タイプをさがしに出かけた。
此処は、浦山川水系の某川の最源流域である。

今日も大気不安定とのこと、山の奥域で雷に遭わぬことを願うばかりだ。

Bh2762m車止めから一時間半ほども歩いて沢に降りる。
沢は前日の雨で水量は多い。 暫しの間、清々しい倒木の架かる小滝の処で一服する。

さて、目的の細流まで沢通しで30分は遡らねばならない。
其処此処で珍しい人間の姿を見て、岩魚達は岩洞や大石の下に走り隠れる。
Bh2762m_2やっとに目指す2m程の小滝の架かる右俣の入り口に着いた。
踏跡などは全く無いが、沢屋さんのだろう古いピンクの目印テープが付いていて参考にはなる。

さて、此処からが本番だ。 赤く装う岩魚は棲むのか、棲まぬのか・・・。
Bh276小滝を登って暫く、熊の掻き跡がある!!。
近寄って見ると、上の方は古いのだが、下の方は新しくて3.4本の爪跡もある。
一瞬迷った・・・。 熊に襲われ掻かかれた己の姿が想像された。 熊除けの鈴を威勢よく振り鳴らしながら遡る。
時々、『ワ~ ワ~』と大声をはりあげもした。

定番ではあるが今日の為に巻いた黒毛鈎を振るのだが、何の音沙汰もない。
B276木立の中に炭焼き跡の石組みが在った。
希望は持てた“此処には必ず棲んで居る。古の杣人が此の細流にも岩魚を持ち上げたに違いない。”
甲高い大きな熊除けの鈴の音で、洞中に潜んでしまっているのかもしれない、かといって熊に逢いたくはない。

B276_2一時間も遡ると、右岸は高い岩壁が続き大石が転在している。
こういった場所が在るならば、増水でも彼ら岩魚は下に流されずに石洞に避難できる筈だ。
しかし、流れはいよいよと細くなる。 “これは、此処には棲んでいないのか・・・。”
鈴を高々と振り鳴らすのは止めた。 “万一、襲いかかられたら発炎筒で煙に巻いて避けよう・・・。”

それが為か、落ち込み毎に落す毛鈎を岩魚は咥えた。
成魚であっても五・六寸が精一杯の大きさだ。
それはそうだ、こんな細流で大きな体では持ちこたえられない。これも自然の摂理の内であろう。

そして、更に遡ること約一時間ほどで二俣になり水量は半減して魚止メを向え確認することができた。
B276_3途中で咥えた七寸の岩魚。
写りは悪いが、顕著な特色を現した奥武蔵タイプであった。
炭を焼いた古の杣人に感謝せねばなるまい。

雷にも熊にも遭わず、足を挫くこともせずに本当によかった。

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2015年6月12日 (金)

朱斑の岩魚をさがして・・・【其の五 峡間の中滝の上へ】

 この日、かねてから気になっていた細流を辿った。
奥武蔵は浦山川水系の葉沢である。
Bh276此の谷は、浦山川の支流に水量比5:1程にも満たない水量で滝を掛けて出合っている。

出合いの滝を登ってから困った。
目の前は、屏風を立てまわしたような峡間で、中に八㍍程の滝が二本二段に架かっている。Bh276_2支流の本谷から岩魚の遡上は無理で、“隔絶された此の上は、きっと在来種が棲んでいるに違いない・・・。”

周囲を見回したが、さて・・・登れるものではない。
暫く右往左往したが、遠く離れた処に古い巻き道を見つけた。

巻き道を二十分程も辿ると、下から見上げていた滝上の落ち口に出た。
さて・・・水量は心細い程に少ないが落ち込みが続いて、渓相は良い。
喜んで毛鈎を結んで落ち込みの溜まりに落すが、何の音沙汰もない。

何の音沙汰も無い侭に一時間程も遡ると、昭和の初期のものであろう炭焼き跡の石組みが在った。
“炭焼き人が、きっと岩魚を上げたに違いない。 秩父の岩魚達は昔人と共に暮らしてきたのだ。”
“もう少し、もう少し上を確かめてみよう・・・。”萎えかけた気持ちが蘇ってきた。

更に、一時間程も遡った。
尾根を越えて来たのだろう、古い薄い踏み跡が降りて来ていて壊れた作業小屋が在った。
B276既に、前の流れは今にも消えそうな程に細い。

それでもと、十㌢もない溜まりに毛鈎を落としたが、音沙汰はない。
更に遡ると、二俣に行き中り、遂に水流は消えてしまった。

“遂に、岩魚には出逢えなかったな・・・。”
それでも、細流の一谷を辿れられて、気持は満ち足りていた。


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2015年6月 5日 (金)

残念な毛鈎・・・

と、云うよりは基本的に失敗した毛鈎・・・と云うのが正しかろう。

 此の日、何時ものようにまだ入ったことのない細流の源流へと探釣に出かけた。
岩魚は棲んでいて、毛鈎を咥えによく出るのだが鈎掛りをしない。
普通なら三匹でて二匹は間違いなく掛けられるのだが、今日は三匹でて一匹しか掛けられない。
咥えた筈なのに何の手答えもなく “スカッ スカッ”と空振るのだ。
探釣では、意図的に釣らない事はあっても 釣れない事はマズイのだ。
“面妖な・・・” 
遂に目も老いてしまって年貢の納め時か・・・と悲嘆もした。
岩魚が喰いつく様を、よ~く岩影から覗き見て原因は判った。
落ち込みに毛鈎を落して少しだけ誘いをかけると、岩影からユックリと七寸程の奴が出て来た。
毛鈎をパックリと吸い込む、・・・?? 奴が潜った後にポッカリと毛鈎が浮き上がってきたのだった。
H276
鈎は七号 蓑毛は山鳥 で問題はない。 (絡んだ蜘蛛の巣の糸は愛嬌として)
着水姿勢を正す為に背から尻尾に鹿毛を付けてみたやつだ。 これがいけなかった!。
長く尻から突き出た硬い鹿毛が岩魚の口吻にあたってしまうのだった。
初歩的な失敗に何故に気付かなかったのであろう。
柔らかい羽で尻尾を付けようか、やはり尻尾は要らないか・・・。
そう思いながら、毛鈎を巻いている。

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2015年5月14日 (木)

朱斑の岩魚をさがして・・・【其の四 峡間の通ラズの上へ】

 此処で、赤岩魚について少し書いておくことにする。
赤岩魚=秩父イワナ、なのだが、赤岩魚には二種類ある。
一種は、奥秩父タイプと呼ばれる種で入川・滝川・大洞川水系に棲んでいる居付きの原種。特徴は、成魚になると斑点は小さくなり薄れて側線辺りから下は黄橙色、つまり黄金色になる。
もう一種は、奥武蔵タイプと呼ばれ大血川より東の、いわゆる奥武蔵と呼ばれる水系に棲む居付きの原種だ。成魚になっても斑点は明瞭で、特に側線辺りから下の斑点は鮮やかな朱点である。
この二種は同じ秩父の山塊の中に棲んでいるので双方を秩父イワナと呼ばれているが、全く別個の地方亜種と思われる。
他の地域(秩父山塊以外で)の地方亜種も濃い着色斑点を持つものもいるが、全ての鰭・腹部についても鮮やかに朱色に着色されているであろうか、多分そうではない筈だ。
無論のことに秩父山塊の谷にさえ行けば赤岩魚に出逢えるということではない。奥秩父タイプにしても奥武蔵タイプにしても限られたほんの少しの場所にほんの少しだけに棲んでいるだけだ。

私は、どちらかといえば繊細な奥武蔵タイプを好もしく興味を持っている。
 そんな訳で、奥武蔵タイプの赤岩魚を捜しに、朝早くに起きだして出かけた。
谷の中流に着き、更に踏み跡はないので沢通しで約一時間半ほど歩いた。
此処の谷は以前に二度だったか辿ったことがある。が、釣り遡って五時間ほどの処が峡間のゴルジュになっていて抜けられず終いだったのだ。今日は、体力と時間を残しておく為に峡間のゴルジュまでを、ひたすらに歩いた訳だ。

峡間のゴルジュに着いた。岩間には2~3mの滝が五本架かっていてとても登れるものではない。
画像で見ると、左岸は如何にも巻けそうだが、この上は岩壁が垂直にそそり立っているのだ。
B
左岸を高く二十分ほどもかけて巻いた。お助け紐を次々に木の根に括っては少しづつ進んだ。

巻き上がったはいいが、暫くすると谷は大岩・大石で埋まり伏流する悪場が100mも続いた。
やがて、水流は復活したが水量は少ない。
“果たして、岩魚は棲んでいるのか・・・” 不安であった。
暫くすると、五寸ほどのまだ幼紋の残る岩魚が毛鈎を咥えた。“こんな細流な棲んでいた!”感動した。

随分と遡って、岸壁の下に小さな小滝の落ち込みがあった。
B1
毛鈎を泳がせると、朽ちた流木の下から黒い影が浮き出て咥えた。
遅合わせで竿を返すと、グンとした中り。
朱色の魚体が鮮やかに見えた。
“ヨシ・・・赤岩魚だ!!”

側面
B803
反対側
B801
背中
B80
頭部
B80_2
腹部
B80_3
下半身
B80_5
上半身
B80_7

八寸の原種の奥武蔵タイプであった。

“頑張って沢山に子孫を残せよ・・・。” よく云い聞かせて、流れに戻した。

此処らは、彼等の終の聖域であるらしい。
土足で立ち入り竿を出し犯すのは無用だ、自然の摂理にまかせよう。


(追) “何処に入ったら出逢えるのか…”といった問いには、お答えできません。


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2015年5月 8日 (金)

岩魚のちょんちょん釣り

 岩魚を毛鈎で虫と騙して咥えさせるのはスリルがあって面白い。
私の場合は、毛鈎を沈めて糸フケでアタリをとる釣りは殆どやらない。
早期にサビの残った岩魚を釣りたくないことと、この“騙し”の面白さとスリルが味わえないからだ。
もっとも、上流・源流の大岩・大石の転がる一跨ぎの細流ばかりを辿り歩いているからで、テンカラ本来の振り釣りすらその場面は少なく殆どがチョウチン仕掛けなのだ。

先日、十日ほど前の七寸のヤクザな岩魚クンに再び登場してもらおう。

こんな処を、滑り転ばぬように遡ること暫く。
B_2
岩陰からソット覗くと、そこは一坪ほどの広さの落ち込みの溜まり淵であった、深さは膝位であろうか。
そこの真ん中に岩が出ていて、そのこちら側に彼の岩魚君が定位していた。
B274
しかし、流れと逆方向、つまり下流を向いて定位しているではないか。
よ~く観察してみると、それでも彼は時々に胸鰭を動かして、その位置に身をとどめていたのだ。
“そうか、水流は突き出た岩の向う側を流れ、岩のこちら側に回り込んでいるのだ。”

これは、面白くなってきたぞ。
「見える魚は釣れない・・・」というが、「見える魚を釣る・・・」ほど面白いことはないからだ。
さて・・・どうやって、彼奴を騙して咥えさせて釣り上げてやろうか。

もう一度、岩陰からソット覗くと、彼奴はまったく同じ態勢だ。
執りあえず、此処まで使ってきて蜘蛛の巣にまみれた七号の毛鈎をテッシュペーパーで綺麗に拭いた。
B_2
ベストから煙草を一本とりだして、火を着けて深く深く吸い込んだ“美味い…”。
 ・・・ 「深沈黙考・・・」とはこのことだ。

執りあえず、定石とおりに流してみよう。
私は、鼻から上だけを岩から覗かせて、ゆっくりとゆっくりと一ヒロほどの仕掛けの先に付けた毛鈎をぶら下げた竿を差し伸べた。
竿影が映り込みはしないかと心配したが、陽射しの角度からして大丈夫だった。
水から突き出た岩向う側の流れ出しに毛鈎をソット下ろした。
思ったとおりに、水の流れに乗って毛鈎は岩を廻り込んで彼奴の一尺ほど前まで流れ寄った。

“オャ…”彼奴は、胸鰭を2・3度動かせて5センチほども前に進み出たが、また元の位置に戻ってしまった。
毛鈎は虚しく、彼奴の頭上を流れ過ぎてしまったのだ。

再び私は、岩陰に引っ込んだ。
“やるじゃぁないか…あの野郎、俺の毛鈎を喰えぬ物と見切りゃぁがった。”
でも、それでよかったし、そうでなくてはいけない。
私は、毛鈎に何の操作もしなくて咥えさせるのは“てんから師”として邪道だ…、まして、毛鈎を限りなく虫に似せてイミテーション化するなんて、あるまじき行いだ…という偏屈にして実に心狭い定義をもっている。

ソット見れば、彼奴は何事もなかったかのように、長閑に同じ場所にいる。
“ヨ~シ” 静かに竿を差し伸べて彼奴の二尺ほどの前の水面にヒョイと毛鈎を落とした。
直ぐに毛鈎を一尺も引き上げ、またヒョイと落とした。
案の定彼奴は、尾びれを動かして一尺ほど走り寄った、いや泳ぎ寄った。
“ここで喰わせまじョ” 毛鈎を素早く引き上げた。
B
そして、彼奴の後ろへ毛鈎を水面の五センチほど上の中空にまで下ろした。
一回、二回、彼奴に少しづつ寄って毛鈎を水面の五センチほど上の中空にまで下ろす。
三度目、彼奴の真後ろの水面上に毛鈎をチョコンと下ろした。
ジッと上目使いで毛鈎の動きを注視していたらしい彼奴は、突然に身をひねって毛鈎に突進して咥え込んだ。

“アッハッハハ 騙されやがった。” 私は、少しの、いやかなりの満足感に浸された。
B274
騙された岩魚は、此奴である。
(いや失礼、どうも熟女のようでもある。)


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2015年4月28日 (火)

山の藤の花が咲いた…とのことで。

まずは足慣らし、ということで奥秩父へは向わずに、横瀬川水系の枝谷に入った。

林道へ車を置き、約30分余り沢沿いの仕事道を歩いて下流域はパスをすることにした。
下流域は去年も入ったからで、此の沢は細流ながら存外と奥が深い。
今日は、「魚止メ」を確認するつもりだ。

竿を出して遡りはじめてから二時間、流れ入る支流が無いので水量は一向に減らない。
小滝の淵や落込みに毛鈎を落すと、小型の岩魚が追う、咥えさせないようにその都度に毛鈎を引上げた。
無駄な殺傷は不要だ。

それにも飽きて、竿を納めて一時間程も遡った。
皐月晴れと云うか空は青く、木々の新芽も清々しいではないか。
通ラズは無いが厳しい処は高巻いて行くと、水量も幾分と減ってきた。
B274_2

“まだ棲んでいるのかナ・・・”
小滝の淵を覗くと六・七寸の岩魚が定位しているのが見えた。
先様も此方に気が付いている筈なのに、随分と図太と云うか横柄な奴だ。
B274

毛鈎を結んで、こ奴の目の前に落すと、何を躊躇することもなく空かさずに咥え込んだ。
引上げてみると、丁度に七寸程だ。
B274_3

“何をしゃあがる…。”
“何をしゃあがる…ったって、人間様を見たら岩の下に隠れるもんだろ。”
“腹が空いててょ、お前にゃ気が付かなかった。”
“幾ら腹が減ってたって、〆て焼かれて食われちゃしょうがなかろう。それに少し肥満だな。”
“余計なお世話だ、俺は前にも釣り上げられそうになったんだ。この上唇の古傷を見てくれよ。”  “運の強い奴だ。とりあえずお姿を写真に撮ったら水に戻してやるから、命は大事にせいよ。”
B274_4
そんなやり取りをして、“バイ バァ~イ” 奴を水の中に放り投げてやった。
が、アイツは今度に入った時は、きっとまた顔を出すだろうな・・・思った。

それからも、峡間の小滝を登り倒木を跨ぎながら苦行して遡ったが、
少ない水量の中、小型の岩魚達は棲んでいて「魚止メ」には行き着かなかった。

とても暑く、とても疲れたが、なんとなく良い一日であった。

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2015年3月27日 (金)

今年も・・・そろそろ

 梅の散って、桜の便りを聞くようになったら
急に春めいて暖かくなってきました。

7                        奥武蔵タイプ 七寸

さて・・・、そろそろ今年も朱斑の岩魚に逢いに行く準備を始めます。


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